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2014年2月12日水曜日

被災地の水はけが悪くなっている!?


雪で地すべり面が白く染まった三原山。手前は被害の最も大きかった神達地区。(2014年1月15日・撮影)

今年の冬は冷え込みが厳しく、伊豆大島にも何度も雪が降った。
上の写真は、少し前のものであるが、先月の15日に撮影したものである。
三原山の崩壊した斜面の部分に雪が白く積もって、くっきりと浮き上がって見える。
パノラマ写真で、復興のまったく進んでいない被災地の様子もよく分かるので、ぜひ、クリックして拡大してご覧頂きたい。


さて、この日は午前中に雪が降り、午後にはすっかり止んだので、歩いて被災地に入り、写真を撮ってまわった。
その時に驚いたのは、雨が止んで何時間もたっているのに、何ヶ所かで『水たまり』を見たことである。

伊豆大島は、火山灰でできた大地なので、異常に水はけが良く、水のある川も流れていないし、雨が降っても、やめばすぐに地面が乾いてしまう。
大島に来て何年もたつのだが、今までは、雨が上がって何時間かすれば、水たまりなんてできることはあまりなかったように思う。

それがどうも、2013年10月16日に被災して以降というもの、この地域全体(もしかすると島全体?)の水はけが悪くなっているような気がするのだ。
島のあちこちから、あの災害以降、水はけが悪くなった・・・ちょっと雨が降ると、すぐに鉄砲水が出るようになった・・・という声を聞く。


 
大金沢の砂防ダム。底面が土なので水はけが良いはずなのに、水浸しに。

そのせいかどうかは分からないが、大金沢の砂防ダムを通りがかると、底の土面が水でグチョグチョになっていた。
正直、被災前には、雨が降っている時に砂防ダムを見に行くことなんてなかったので、今回の被災によって以前よりも水はけが悪くなったのかどうか・・・それは何とも言えない。
 
ただ、「コンクリートで固めた砂防ダムができたせいで、山全体の水はけが悪くなったのではないか?」という疑問の声が、以前から住民から提起されている。
それに対して行政や砂防ダムの擁護派は、「底面はコンクリで固めていないので、水はけを悪くしているはずがない。」との反論を出している。
 
しかし、上の写真を見て頂ければ、一目瞭然であろう。
どこからどう見ても、砂防ダムの中が水はけが悪いことは、明らかである。
  
まわりの土地を見回してみても、こんな風にグチョグチョに水がたまっているようなことはなかった。
明らかに、この砂防ダムの中だけが水はけが悪くなっているのだ。
 
事実、あの被災の時には、この砂防ダムがガレキで詰まって水があふれ出し、100メートルを超える湖になって、周りの民家数軒を水没させたという。
 
おそらくは、底面の地表は重機でならしてガチガチに固めているだろうから、それだけでも充分に水はけは悪くなっていると思う。
それに加えて、四方はコンクリートで囲まれているわけだから、周囲の地表の通気性が完全に塞がれて、それによって底面の水はけまでも悪くなっている・・・という可能性も考えるべきであろう。

いずれにしろこの状況を見れば、とにかく砂防ダムによって水はけが悪くなっていることは、明確な事実なのである。
コンクリで固めているかどうか・・・という点だけが問題なのではない。


 
しかし一方では、砂防ダムによって大量のガレキ(流木)を食い止めた・・・というのも厳然たる事実なのである。
そこで問題になってくるのは、砂防ダムによって被害が減った部分と、増えた部分と、どちらが大きいのか??・・・ということになってくる。
 
下手をすると、砂防ダムによって水はけが悪くなって、それによって上流の斜面の崩壊が拡大し・・・そのガレキを砂防ダムが自ら防いだ・・・という『自作自演』の災害だった可能性もあるわけだ。
 
行政側としては「砂防ダムによってガレキを防ぎ、大きな効果があった」と大きな声で振れ回り、自分たちの手柄を演出して、さらなる砂防ダム建設を推進しようとしている。
 
しかしここは、砂防ダムが本当に土砂災害に対して効果を上げていたのか、プラスマイナスできっちり査定して、客観的な判断が必要であろう。
(※そもそも、これらの『砂防ダム』は、溶岩流を食い止めるために設計されたものであり、構造的には土砂災害を食い止めるためのものではないのだ!!)


道路の脇から『ガリー侵食』が起こって、水までたまっている。


さて次に、先ほども少し述べたのが、
隣接する地表面が、コンクリートやアスファルトで固められると、その周辺の土壌も水はけが悪くなるのではないか?
ということを考えさせられる事例に出くわした。
 
上の写真がそれなのだが、私が被災前に住んでいた家のすぐ近くの道路である。
見ての通り、道路の脇の地面が水によって削られて、ちょっとした谷間のようになっている。
しかも、ここにも大きな水たまりができていて、明らかに水はけが悪くなっていることがうかがえる。
このように、土壌が水で削られてV字状の溝が掘られていくことを、ガリー侵食と言う。
 
ここは私の住んでいた家のすぐ目の前なので断言できるのだが、被災直後にはまだ、この道路脇のガリー侵食は起こっていなかった。
数日後に強い雨が降った後に、このようなガリー侵食が始まり、日に日に少しずつ拡大しているのである。
 
ひとつには、被災によって、地表の木や植物がすべて剥ぎ取られ、それによって地表が守るものなくむき出しになったために、侵食されやすくなったのだろう。
(※このことは、過去の狩野川台風や「びゃく」と言われる山崩れが、森林伐採の影響によるのではないかという先の記事での私の指摘と関連してくる。)
 
また、この場所でガリー侵食が起こっている理由としては、上流の道路から流れてきた水が、地形的にこの辺で地面にすべり落ちるため、その水量と勢いで地表が削られていくのだとは思う。

だが、ここで一番問題になってくるのは、このガリーの底面に大きな水たまりができているということなのである。
 
本来は、たまった水くらい、すぐに地中に吸い込んでしまうのが大島の大地なのだから、この道路の周囲は明らかに水はけが悪くなっているのである。
 
これは道路そのものが原因なのか、それとも道路整備するために地面を重機で押し固めたことが原因なのだろうか?
今はどちらかはっきり分からないが、今後の検証としたい。

 
ガリーの底の水たまり。周りの地面も水を含んでいて、かなりグチョグチョ。

それから、さらに気になることがある。
この「道路によって起こるガリー侵食」こそが、今回の大規模な山津波(土砂災害)の本当の原因である・・・と土木に詳しいある方から聞いたことだ。
 
それによると、道路(御神火スカイライン)のすぐ脇からガリー侵食が発生し、長い年月をかけて(この場合20年以上)深い溝(ガリー)を掘り込んでいく・・・という。
そして、ガリーの深さが一定のところまで達し、さらに今回のように許容量を超える雨が降った時に、周囲の広範な土壌が一気にガリーに向かって崩れ落ちていく・・・それが、大島の土壌に特有なメカニズムなのだという。
 
ただ、正直・・・山の斜面がこれだけ大規模に崩壊してしまった後では、本当にそのような大規模な斜面崩壊を引き起こすようなガリーがあったのかどうか、確認のしようがないような気がする。
だから、この説を立証することはかなり難しいかも知れない。
 
しかし、現にこうして道路の端からガリー侵食が起こっている現場を目の当たりにすると、この『ガリー侵食説』についても、もっと本気で調べてみなければ・・・と思う。
お正月に工事が休んでいる間、私は御神火スカイラインをふもとから一番上まで登っていって、斜面にこのようなガリー侵食の跡が確認できないか、自分なりに調べてみた。
 
御神火スカイラインの最上部から1段目の斜面には、あまりくっきりしたガリーは見られなかったが、2段目から下には、いくつもの大きなガリーが上から下へ走っていることが確認できた。
(※写真は整理中なので、後日公開します。また、この『ガリー侵食説』の詳しい説明も、後日改めて書きたいと思います。)
 
ただ、専門家でもない私にできたのはそこまでで、それらのガリーが、今回の斜面崩壊にどれだけ影響したのか・・・それ以前に、崩壊の前からそれらのガリーは存在していたのかすら判断することはできなかった。
 
今後は、何とかして、専門家にこのような疑問をぶつける機会を作っていきたいし、行政サイドにもぶつけて、見解をうかがっていきたいと思う。
 
この問題について何らかの知見や情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせ下さるようお願いいたします。

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