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2014年3月9日日曜日

首都大学東京セミナーのレポート

今日は、大島支庁(東京都の出張所)で、首都大学東京の研究者による「現地報告会」があったので行ってきたよ。

今まで、町役場には用事があってよく行ってたけど、大島支庁にはほとんど来たことがなかったんだよね!
それにしても、建物の立派さもすごいけど、今日の会場の会議室は初めてで、もうめちゃくちゃ立派できれいだったので、「さすが東京都!!」とけっこうびっくりしたよ!!!

町役場とはえらい違いだ・・・。
くまっしぃの企画している災害セミナーも、この部屋使わせてもらえないかなあ????

前に避難住宅として一時入居させてもらっていた東京都の教職員住宅も、めちゃめちゃ金かかっていて立派だったもんなあ・・・。
こんな建物、島の中では他にはないよー。
なんか、お金のあるなしっていう違いを、本当に実感するよねぇ・・・。


コンクリート打ちっぱなしに吹き抜けと、典型的なオシャレ現代建築だね


まぁ、そんなことはともかくとして、会場にはだいたい70人くらいの人が来ていて、なかなかの盛況だった。
事前に、町中でチラシの張り出しもしていなかったから、くまっしぃ勝手に人が集まるのか心配していたけど、告知は充分にされていたみたい。

災害関係のセミナーでは、これだけの人数が集まるのは久しぶりだったので、ちょっと驚いた。
でも、よく見ると、20人くらいは首都大学東京の受講生だったし、町役場の人とか関係者とかもちょこちょこ居たので、一般住民の参加者は正味半分くらいだと思う。

このくらいの人数なら、13日に仮設住宅でやるセミナーでも、来てくれるのは多くても50人くらいじゃないかなぁ・・・。

報告会(セミナー)の内容は、以下の通り。

首都大学東京 台風26号土砂災害の現地報告会

3月9日(日)13:00〜15:00
大島支庁2F会議室

調査報告1:
「表層崩壊の発生と素因としての地形・地質に関する調査報告」
鈴木 穀彦 都市環境学部・地理環境コース 教授

調査報告2:
「表層崩壊域の上部斜面の植生および土壌の調査報告」
渡邊 眞紀子 都市環境学部・地理環境コース 教授

質疑応答(30分)

入場:無料・申込不要

会場は70人ほどが集まり大盛況だったよ!!


前半の鈴木穀彦先生のお話は、主に、地形や地質の影響についてのものだった。
ざっくりまとめると、
今回の「山津波」と呼ばれる土砂災害は、当初考えられていたよりも、はるかに地表の浅いところで発生した「表層崩壊」であること。

最初の頃は、14世紀の噴火活動で形成された元町溶岩流と呼ばれる溶岩の地層が、崩壊している範囲と大きく重なっていることから、斜面崩壊(地すべり)の大きな原因ではないかと広く考えられていたが、
・元町溶岩の分布している範囲以外でも、斜面崩壊が発生している
・元町溶岩の上にも分厚く火山灰の地層が崩れ残っている
などの理由で、この仮説は現在ではあまり支持されていない。
ただし、この元町溶岩流によって、それ以前に存在していた谷間が埋められて、比較的平らでなだらかな地形が形成され、それが幅の広い斜面崩壊につながり被害を大きくした・・・その意味では、元町溶岩の地形的な影響は大きかった
だいたいこういうお話だったと思う。
この見解については、京都大学防災研究所の寺嶋先生とほぼ一致している。 
おおよそ、学者・専門家と言われる人々の間では、 きちんと研究成果や認識の共有がされているようである。

寺嶋先生のグループが特定した、地表から深さおよそ1メートル前後の火山灰層の中に存在している水を非常に通しにくい「難透水層」については、まだ認識していなかったみたいだけど、この「難透水層」についての見解もいずれ専門家全体に共有されるだろう。


報告発表の様子


さて、後半の渡邊眞紀子先生「地表の植生がどのように斜面崩壊に影響したのか?」というお話は、初めて専門家が植生について語るのを聞く機会だったので、くまっしぃとしては非常に興味を持って臨んだ。

植生というのは、つまり地表にどんな植物が生えていて、どんなコンディションなのか・・・ということだ。
渡邊先生によると、植生の状態によって斜面崩壊に防止効果があるのは確かで、今回の斜面崩壊にも一定の影響があった可能性はある・・・とのことだったが、話はあくまで可能性があるというところまでで、何か具体的な結論を出すのには、これからさらに時間がかかるようだった。

くまっしぃの印象に残っている内容をまとめると、
木の根は、草地よりも地表の侵食を防ぐ効果は低いが、その替わり、地層全体を保持する効果がある。

地表に植物や森林が育つと、「土壌」の形成が促進され、根の下の地層に粘土層が形成されていく。さらに下の地層に「難透水層」がある場合は、地表をずれやすくする。

まだ若い森林に育ちやすい種類の木の根は、斜面を支持する力が弱く、一方で、成熟した森林で育つ種類の木の根ほど、斜面を支持する力が強くなる傾向がある。

崩壊斜面の中で崩れ残っているところに、落葉広葉樹が生えているのが何ヶ所か確認できた。
場所や地形にもよるが、生えている木の種類や組み合わせによって、斜面崩壊が起こるかどうかが分れた可能性もあると思われる。

斜面崩壊が起こる以前の航空写真と、実際の崩壊範囲とを見比べてみると、植生の違い(※色の違いで判断)と崩壊箇所が一致しているように思われるエリアがある。
トータルで見れば、森林に斜面崩壊を防ぐ効果があるのは間違いない。それは統計的解析でも、力学的研究でも明らかだ。
といった感じだった。 
これからの研究で、より精密な分析結果が出てくることを期待したい。


最後の質疑応答では、道路(御神火スカイライン)が斜面崩壊に関係あるのではないのか??という質問が出た。
それに対して、お2人の先生は、「何らかの影響があったとは思うが、斜面崩壊の要因としては比較的小さなものだと思っている。」との回答で、道路があってもなくても、あれだけの大雨が降れば斜面崩壊は起こっただろう・・・との見解が示された。

この道路の問題については、くまっしぃも同じ疑問を持って色々調べてきたのだが、現在のところは、一定以上の雨量があると地中に浸透し切れなくなるという明確な科学的データが出されたので、 やはり道路があってもなくても斜面崩壊は起こったのかな・・・という認識になりつつある。

ただ、まだ問題がすべてクリアになったわけではない。
例えば、道路の存在が、周囲の斜面の植生に影響を与える可能性だってあるわけだ。
そうなると今度は、植生がどれだけ斜面崩壊に影響を与えたのか・・・つまり、地表の植物の状態によっては、斜面崩壊の規模が違ってくることがあるのか・・・あるいは、より大きな雨量を耐えることができるようになるのか・・・そういったことを考える必要が出てくる。

そこで、くまっしぃからも、
「もし理想的な植生(最終極相)が存在していたとしたら、具体的にどのくらいの雨の量まで斜面崩壊を防止する効果があるのか??」
「崩壊発生地点に近い谷筋で、上流から斜面崩壊した土砂が流れてきているにも関わらず、杜の中で崩れ止まっているところがあった。下流まで崩れ落ちていったところと、このように途中で崩れ止まっているところの違いについて、どのような見解をお持ちか??」
といった質問をしたけど、残念ながら、くまっしぃ的にははっきりとした答えをもらえなかったという印象だった。
まだまだはっきりしたことを言うには、調査研究に時間がかかるのだろう。

2つ目の質問の「崩れ止まったところがある」ということについては、いずれ別記事を立てて書こうと思う。

他にも、「地中への水の浸透を良くする仕組みを考えるべきではないか??」という質問があったが、「それもとても大切なことだと思う」という話にとどまった。


正直、何回も専門家のセミナーに参加しまくって色々な話を聞いてきたくまっしぃとしては、特に新しく分かった話は少なかった。
それでも、専門家の皆様が、誠実かつ熱心に調査研究に取り組んでいるということがよく伝わってきて、良かった。
参加した住民の多くにとっても、専門家の研究成果に触れる貴重な機会だったと思う。

今後も、新しい研究成果が出たら、このような形でぜひ住民に還元してほしい。

今回はこのような機会を、ありがとうございました。

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