先日、「本当に雨量が原因なのか??」という記事で書いたように、今回の台風26号による土砂災害の最も不可思議な点のひとつに、「元町だけに800ミリという大量の雨が突出して降った」という特異な気象現象がある。
なぜ、このようなことが起こったのか??
気象庁の気象研究所は、風雨が元町付近に収束する現象が起こった・・・ との見解を発表している。
とりあえず気象研究所は、この現象を地形の影響など自然現象として解釈している。
詳しくは、こちらの発表資料をご覧頂きたい。
風の影響で、元町周辺だけ突出した雨量になったという指摘はきわめて重要である。
よく考えてみると、以前からこのような現象はたびたび起こっていた・・・ということを、この指摘によって思い起こしたからである。
私は、伊豆大島に移住してきてかれこれ8年くらいになるが、時々、伊豆大島の中でもなぜか元町だけ雨が降る・・・という現象を、何度か体験した。
北部も南部もカラリと晴れているのに、なぜか島の真ん中にある元町地区だけは雲がかかって、1日中ジメジメと雨が降り続いていた・・・というとても奇妙な日もあった。
そして、今年の1〜2月はとても寒くて何度も雪が降ったのだが、私が現在住んでいる元町の避難住宅では、「吹雪」としか言いようのない激しい雪嵐が吹き荒れているのに、少し離れて南部や北部に行くと、まるで何でもなくシトシトと静かに降っている・・・ということが、1度ならず何度もあった。
つまり、元町周辺だけ激しい風が吹いて、他地区よりも雨や雪が強くなる・・・という気象現象を、私は今までも何回も繰り返し体験しているのだ。
そして、台風26号の時にも、これと同じことが起こった・・・というわけなのである。
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ところで、気になることがあるのだが、実は、この気象現象が、本当に地形の影響などによる自然現象なのかどうか、非常に疑わしく思えてくる地元島民からの重要な証言があったのである。
今回の土砂災害(山津波)で最も被害の大きかった神達地区に昔からお住まいの方の証言なのだが、その方によると、「新しい砂防ダムを造ってから、突然、神達地区に強風が吹くようになった」というのである。
元町周辺には、大きな砂防ダムが何箇所も造られているのだが、この証言に出てくる砂防ダムは、下の写真に映っている大金沢の支川に造られた比較的新しいダムのことである。
メインの大金沢砂防ダムの北東方向にあり、おそらくまだ建設して10年〜20年ほどだろう。
大金沢支川の砂防ダム。やはりダムの中の水はけも悪い(2014年1月2日・撮影) |
証言をして頂いた住民の方によると、それまでは神達地区は日頃から静かで風もほとんど吹かなかったのに、この砂防ダムが建設されてからというもの、毎日すさまじい強風が吹きつけるようになった・・・というのである。
伊豆大島は、海に囲まれた島でもともと風が強い場所なのだが、内陸に入ってしまえば、背の高い森に覆われていて、風が吹き込むことは少ない。
砂防ダムの建設で、防風林の役割をしていた森を伐ってしまったことで、風の流れが変わってしまったのだろうか?
それもあるのかも知れないが、砂防ダムの用地は、森を伐採するだけでなく、上の写真のように地面を掘って大きな穴を開けた形になるので、山の斜面を下ってきた風がダムの底面に吹き込んで、予測できないような気流を形成するのかも知れない。
また、この方の証言では、「砂防ダムと同時期に、家の上地区で住宅開発が行われたので、もしかしたらそちらの影響もあるかも知れない」とのことだった。
気流に与える影響という点では、地面に数十メートル四方の巨大な穴を開けている砂防ダムの方が、可能性は高いだろうが、一応は慎重に考える必要もありそうだ。
いずれにしろ、この証言により、砂防ダムが風の流れを大きく変えてしまうという可能性が出てきた。
そして、もしかしたら、これが元町地区全体の風の流れに影響を及ぼし、ひいては雨の振り方にも影響を与えている張本人なのかも知れないのである・・・。
つまり、「島の中でもなぜか元町だけ雨が降ったり、突出して雨量が多かったりする」という謎の現象は、砂防ダムという人工物による影響である可能性が出てきたわけである。
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伊豆大島は、海に囲まれた島でもともと風が強い場所なのだが、内陸に入ってしまえば、背の高い森に覆われていて、風が吹き込むことは少ない。
砂防ダムの建設で、防風林の役割をしていた森を伐ってしまったことで、風の流れが変わってしまったのだろうか?
それもあるのかも知れないが、砂防ダムの用地は、森を伐採するだけでなく、上の写真のように地面を掘って大きな穴を開けた形になるので、山の斜面を下ってきた風がダムの底面に吹き込んで、予測できないような気流を形成するのかも知れない。
また、この方の証言では、「砂防ダムと同時期に、家の上地区で住宅開発が行われたので、もしかしたらそちらの影響もあるかも知れない」とのことだった。
気流に与える影響という点では、地面に数十メートル四方の巨大な穴を開けている砂防ダムの方が、可能性は高いだろうが、一応は慎重に考える必要もありそうだ。
いずれにしろ、この証言により、砂防ダムが風の流れを大きく変えてしまうという可能性が出てきた。
そして、もしかしたら、これが元町地区全体の風の流れに影響を及ぼし、ひいては雨の振り方にも影響を与えている張本人なのかも知れないのである・・・。
つまり、「島の中でもなぜか元町だけ雨が降ったり、突出して雨量が多かったりする」という謎の現象は、砂防ダムという人工物による影響である可能性が出てきたわけである。
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まるではかったかのように砂防ダムからまっすぐ上の斜面が崩落してきている |
実は、砂防ダムに関しては、以前から園芸家の矢野智則さんという方や、島の住民グループから、「砂防ダムによって地下水脈の流れが悪くなり、土砂災害が引き起こされた」として、今回の土砂災害の真の原因であると名指しされている。
→矢野智則さんについて詳しくは、杜の園芸ホームページへ
そう言われてしまうのも無理のないところで、なにしろ例外なく全ての砂防ダムで、上の写真のようにそのすぐ上部の斜面が崩壊しているのだ。
これは、砂防ダムが原因でそのすぐ直上斜面が崩壊したのか、それとも、もともと崩壊しやすい斜面のすぐ下に砂防ダムを設置したからこのような結果になったのか、どちらからでも説明ができるため、真っ向から意見が食い違っている。
国土交通相や東京都などは、「砂防ダムがガレキを食い止め、防災に大きな効果を発揮した」として住民グループとは正反対の主張をしており、今後もどんどん砂防ダムの建設を進めるつもりのようである。
◇
東京都が伊豆大島で特に力を入れている砂防ダム事業には、これで我々住民から二重の疑惑がかけられたことになる。
・地下水の流れを妨げて、斜面の崩壊を誘発したのではないかという疑惑
・新しい風の流れを作り出し、それが元町に大雨を降らせたのではないかという疑惑
この2点である。
1点目の疑惑を否定する説明としてこれまで必ず挙げられてきたのが、
「今回の災害は、24時間あたり800ミリという想定を超える大雨が原因の自然現象だ」
という説明なのだが、そもそもこの800ミリという雨量そのものが人災である可能性が浮上してきたのである。
もう一度、2013年10月16日の気象庁の雨雲レーダーによる雨量推計(右上の図)を見てほしいのだが、
元町地区という限られた狭い範囲だけが、不自然に突出して赤くなっている。
通常の自然現象であれば、もっと周辺地域との変化がなだらかでグラデーションがかかっているはずだが、元町地区だけが突出して赤くなっているのはどうにも不自然な現象なのではないだろうか??
伊豆大島の中でも、砂防ダムに取り囲まれた地区というのは、この元町だけであるから、それでこのような特殊な結果が出たのでは・・・と深読みしたくもなる。
しかし、これらの間接的な「状況証拠」 だけでは、もちろん何の証明にもならないことは、しっかりお断りしておかなければならない。
私としても、科学者でもなければ専門家でもないので、この問題をこれ以上どうやって調べて検証していけば良いのか・・・まだ見えないでいる。
しかし、とにかくこのような疑惑が提示されているということだけは、しっかり内外にアピールしていって、専門家の検証も仰がねばならないだろう。
上記の神達住民の証言は、専門家が直接ヒアリングしたものでもあるのだが、調査したのが気象の専門家ではなかったので、おそらく専門家の気象研究には反映されてこないだろう。
このまま放っておけば、埋没して何もなかったことになってしまう。
だがもしも、砂防ダムが風の流れに大きな影響を及ぼしているとすれば、それは、今後の復興や防災体制の整備のあり方を大幅に見直さなければならない・・・というとても重大な事態なのかも知れないのである。
今後、また何か分かったら、くまっしぃジャーナルでも随時報告していく。
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