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2014年4月12日土曜日

長沢でも空前の規模の崩壊が起こっていた!!!

もうひとつの崩壊現場「長沢」を見てきた


何日か前に、元町の北側にある「長沢」の斜面崩壊している場所を、初めて見に行ってきた。

半年もたつのに、これまでなかなか余裕がなくて見に行けなかったのだが、実際に現場を見てみると、あまりのすさまじさに言葉も出なかった
人的被害がなかったとは言え、被害の大きかった神達地区とまったく同じくらいの規模の斜面崩壊と土石流が発生しているのだ。
(※空中写真で見ると、大金沢上流の崩壊地域の半分ほどの幅しかないように見えるのだが、このうち被害のあった神達方面に流れた土石流だけを切り取って見ると、長沢の崩壊とほとんど同じ幅なのである。)

大金沢に次いで最大規模の崩壊を起こした長沢の最上流部
幅の広さで言えば、神達地区を襲った土石流に完全に匹敵する

今回の災害で大きな被害が出たのは、元町の南側を流れる「大金沢」の流域なので、報道でも住民の間でも、そちらばかりが注目されている。
しかし実は、元町の北側を流れるこの「長沢」流域でも、かなり危機的な事態が進行していたのである。

長沢では、たまたま砂防ダムで土砂を食い止めることに成功したため、被害がなかった。
「被害がなかった」ということで、このエリアのこともまったく注目されなくなってしまっているのだが・・・・実際に現場を見てみると、この場所の持つ危険性が肌で感じられる。

大金沢に比べると、おそらく山の斜面の距離が短いために発生した土砂量が少なかったのと、長沢の砂防ダムの方が大金沢よりも巨大であるし、2重3重の砂防ダムがあったので、それでうまく被害を食い止められたのであろう。

だが・・・この長沢の下流には、市街地もあってたくさんの人が住んでいるのだ。
今回は被害がなかったからと言って、それで安心してしまって良いのだろうか??

長沢の下流に住んでいる住人の人たちは、もちろん今後の災害を心配している人も多いのだが・・・より下流の市街地エリアの人たちになると、まったく他人事のような人がかなり多いように、私には思われる。

下流の市街地の人たちは、砂防ダムから離れていて崩壊現場が見えないので、実感がまったく持てていないようだ。
おそらく、ほとんどの人が、砂防ダムを超えて、土砂崩壊が起こっている現場まで足を踏み入れていないであろう。

人は、やはり自分の目で見てみない限りは、その危険性を実感できないのだと思う。

だが・・・崩壊している現場をじかに体験すると、あまりの規模にとても空恐ろしくなる。
皆さん!!!!まったく他人事じゃないですよ!!!!


元町には安全な場所など存在しないのが現実だ


55年前の狩野川台風の時にも、大金沢流域と並んで、この長沢流域でも大規模な斜面崩壊が発生し、多くの被害を出している
今回の土砂災害でも、本当はまったく同じパターンだったのだ。

それを考えると、今回の災害では、まるで元町の一部だけが被害を受けたかのように思われているのだが、一歩間違えば、北からも南からも大規模な土石流が元町を襲い、ほとんどの地域が壊滅状態になる・・・というシナリオも、現実的にはありえたわけである。

伊豆大島住民は・・・そして、行政に携わる大島町や東京都の方々は、この点をもっとよく考えて頂きたい。
元町という地域は、全エリアが危険地帯なのであって、本当は安全な場所などどこにもないのだ。

長沢の砂防ダムに向かって流れ下って行く。砂防ダムの向こうはもう住宅街

もしも砂防ダムがなければ、おそらく元町全域が壊滅し、千人の単位で人が死んでいただろう。
そして、砂防ダムがあるからそれで良いということではなく、危機管理の観点からは、人間の行うことには「万全ということはありえない」と考えておくべきである。

今回、大金沢流域にも多数の砂防ダムが設置されていたにも関わらず、土石流が「予想外のところを乗り越えて」住宅街へと侵入し、大きな被害を出した。
今後また、いつどこでそのようなことが起きないとも限らない。

今回の被災地(元町南部)だけでなく、元町北部の長沢流域をはじめ、元町全域にその危険性が常にあることを、もっとよく自覚すべきである。


伊豆大島全体にわたって同様の警戒意識が必要


このことは、実は、大金沢よりもさらに南にある八重沢・八重南沢についても同じことで、そこの崩壊現場を間近で見てみると、やはり大金沢に匹敵するような空前の規模の崩壊が起こっているのだが、遠くから見るとよく分からないので、住民はこのことをほとんど気がついていない

元町から遠く離れた北部の泉津地区でも大きな被害が出ていることは先日も記事を書いたし、同じく北部の岡田地区でも数軒の被害が出て、中には家に住めなくなって仮設住宅に入居している人も居る。
平地が多くて一番安全だと思われている北の山地区でさえも、傾斜地の住宅があるので、人家のすぐ近くまで斜面が崩れてきて、雨が降るたびに恐怖におののいている住民が、実際に居るのである。

ほとんどの伊豆大島の住民は、自分のところが被害がなかったために、まったく「他人事」のような感覚で見ているのだが、このように、同じような災害は島のどこにでも起こる可能性があるのだ。

斜面なら上流から土砂が崩れてくるかも知れないし、平地でも沢に流れてきた土砂があふれる危険性は多分にある。

現状は、今回被害のあった地域に防災対策を施すような構想しかされていないのだが、果たしてそれで良いのだろうか??
これは、元町の南側だけの問題なのではなく、島全体の問題として考えていくべきなのである。

災害で倒された大島桜が芽吹いて花を咲かせている


平地への「集団移転」も真剣に考えるべきではないのか??


元町地区の北部でも、たまたま砂防ダムが効果を発揮したから被害がなかっただけで、神達地区と同じような被害が出ていても、まったく不思議ではなかった。
大量の土砂が、長沢の砂防ダムを乗り越えて元町の中心街に侵入し、町が壊滅状態になることだって、ありえなくはないのだ。

そういう意味では、現在進められているような何百億円もかけて砂防ダムを整備したところで、想定外の事態が起こって土石流が町に流れこむことはいくらでもありえる
何百億円もかけて砂防ダムにかけるお金があるのであれば、いっそのこと元町全域を全面放棄して、北部の安全な平地に集団移転し、新しい町を作り直した方が、よっぽど低コストで安全なのではないだろうか???

伊豆大島には、北部に広大な平地があり、再開発の余地が多分に残されている
これは、かつてまだ水道がなかった頃に、平地は水の確保が大変で人口が少なかった名残りなのだが、現在は水道も道路もインフラが整っているのだから、いつまでも危険な元町に固執することはないと思う。

この問題は、元町のものだけなのでない。
先ほど述べたように、島中の斜面にある住宅地が危険なのだから、伊豆大島全体の問題として、全住民の皆さんに、真剣に考えて頂きたいのである。

このような焼け野原のような裸地にも、しっかりと新しい息吹が


1986年の溶岩流が果たした役割とは??


ところで、長沢の崩壊現場を見てまわってひとつ気づいたことがあるので、ここで指摘しておきたい。

この長沢流域には、1986年の三原山大噴火の時に流れ出した「溶岩流」の跡が残っている。
以前から、その溶岩流が、今回発生した土石流の水分を地中に吸い込んでせき止めてくれた・・・と言っている人が何人か居るのである。

だが・・・私が現場を見てきた結果、そのようなメカニズムが働いたとは考えられない・・・と言わざるをえない。
おそらく、「溶岩流が土石流を食い止めた」と考えている人たちは、砂防ダムより下流の溶岩流のところを遠くから観察しただけで、砂防ダムを乗り越えて奥地の崩壊現場まで立ち入って見ていないのだと思う。

砂防ダムより上流の崩壊現場では、土石流が溶岩流の上に乗り上げて、そのまま下流まで突き抜けて流れ出しており、食い止められてはいなかった

そればかりか、溶岩流の跡というのはごつごつした無数の岩片の集合からなっているのだが、それが砂だらけの土石流と渾然一体となって混ざり合い、砂と岩片からなる新しい土壌を形成しているのが観察された。

溶岩の岩片と、土石流の砂が混ざり合って、新しい地層を形成している

考えてみれば、溶岩流の下には普通の地層があり、そこには「レス層」と呼ばれる水をほとんど通さない「難透水層」があるのだから、溶岩流に土石流がぶつかったからと言って、そのまま地中に水が吸い込まれるわけはない。

単に、土石流に溶岩の岩片が大量に混ざり合って、そのまま流れ続ける・・・ということになるのだろう。
ただ、土石流に岩片が混じり合うことで、流れるスピードが遅くなる効果は考えられるだろう。
(※ある程度の土砂をその場で吸収して留める効果もあったかも知れないが、かなり限定的な効果だと思う。)

砂防ダムより下の溶岩流のところで、土石流が止まったというのは、単に土石流の勢いがそこで止まったと考えるべきで、土石流のほとんどを食い止めたのは、明らかに砂防ダムである

私は別に砂防ダムを擁護するつもりはまったくなくて、どちらかと言えば砂防ダムには反対の立場なのだが、事実は事実として指摘しておきたい。
(※この記事を最初にアップした時、ちょっとした事実誤認を書いていたので削除したでしー。ごめんなさいでしー。)

砂防ダムのような高コストで無駄の多いシステムを全廃させるためには、もっと効率的で誰もが納得する代替システムを提示していかなければならないだろう。

そのためには、まず砂防ダムの果たした役割を客観的に評価しつつ、そこから考えていく必要があると思う。
何より、私たち住民には「いったいこの砂防ダムがなかったら、どんな恐ろしい事態になっていたのか」・・・と考える想像力が、まったく足りていないのではないか・・・と思えてならない。

まずは、そこから・・・である。


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